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蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その27 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

モンフェルメイュの飲料水問題

 モンフェルメイュは、リヴリーとシェルとの間に位置し、ウールク河とマルヌ河をへだてている高台の南端にある。

 のちのちには大きな町になるが、1823年には、それはただ森の中の一村落にすぎなかった。


 モンフェルメイュの欠点は、水が不自由なことだった。

 かなり遠くまで水を汲みにいかないといけなかった。

 テナルディエの家で、下女のように働かされているコゼットにとってそれは大変な仕事で、特に夜に水を汲みに行くことは身震いがするほど恐れていた。


 クリスマスの夜。

 テナルディエの宿屋。

 コゼットはいつものように、料理場の隅で命じられた仕事をしていた。

 子供が泣き出した。

 テナルディエ夫婦が先年の冬にもうけた男の子だった。

ふたりに関する完稿

 テナルディエ夫婦のこと。


 亭主は50歳の坂を越したばかりで、女房は40代。


 女房は野蛮な大女。

 亭主は顔色の悪い小男で、不健康そうに見えるが、じっさいは頑健だった。


 亭主は1815年のワーテルローの戦場で盗んだ金目のものを元手に、モンフェルイュで飲食店兼宿屋をひらいた。

 一見すると、女房が亭主を尻にしいているように見えるが、じっさいは逆で、主導権は亭主が握っていた。


 金持ちになることが亭主の夢だったが、叶っていなかった。

 1823年、彼は1500フランばかりの借金を背負っていた。


 夫婦は、それぞれ異なったやり方で、コゼットを圧迫した。

 コゼットはぶたれた。

 それは女房のほうだった。

 コゼットは冬も素足で歩かされた。

 それは亭主のほうだった。


 コゼットは、あたかも蜘蛛に仕える蝿のようなありさまだった。

人には酒を要し馬には水を要す

 コゼットはまだ8歳だったが、悲観的だった。

 彼女のまぶたは、テナルディエの女房に打たれたので黒くなっていた。

 女房は言った。

「目の上にシミなんかこしらえてさ。

 なんて醜い子だろう!」


 夜になっていた。

 水がなくなっていた。

 宿屋に泊まっている行商人が、自分の馬がまだ水を飲んでいない、とクレームをつけた。

 コゼットは、もうやった、と嘘をついた。

 だがすぐに見破られた。

 テナルディエの女房に怒鳴られ、コゼットは自分の身体より大きな桶を抱えると、水を汲みに行った。

人形の登場

 露店の列が、教会堂からテナルディエの宿屋のところまでひろがっていた。

 列のいちばん端に、オモチャ屋があった。

 オモチャ屋のいちばん前の棚には、美しい人形が置かれていた。


 コゼットはその人形を「奥様」と呼んでいた。

 女王か王女でもないかぎり、この人形を手に入れることはできないだろうと思っていた。

 水汲みの用事を言いつかっていることも忘れて、コゼットは人形に見入った。


 と、テナルディエの女房の荒々しい声が、彼女を現実にひきもどした。

「ばか娘、まだ行かなかったのか!」

 コゼットは大急ぎで逃げ出した。