読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その25 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

ワーテルローは祝すべきか

 世の中には少しもワーテルローを憎まない、尊敬すべき自由主義の一派がいる。

 私(著者)はその仲間ではない。


 ワーテルローは、反革命の勝利である。

 フランスに対抗するヨーロッパの勝利であり、

 進取に対抗する現状維持の勝利である。


 反革命は自ら欲せずして自由主義となった。

 ナポレオンも自ら欲せずして革命家となった。

神法再び力を振るう

 執政官制の終焉。

 ヨーロッパの全様式は瓦解した。


 ナポレオンがロングウッドの住居において臨終の苦悶をけみしつつある間に、

 ワーテルローの平野に倒れた6万の人々は静かに腐乱していき、

 彼らの平和のあるものは世界にひろがっていった。

 それをウイン会議は1815年の条約となし、

 それをヨーロッパは復古と名づけた。

戦場の夜

 1815年6月18日の夜は満月だった。

 最後の砲撃がされた後、モン・サン・ジャンの平原には人影もなかった。


 戦争の最もはなはだしい醜悪のひとつは、戦死者のこうむる略奪である。

 6月18日から19日へかけての夜、死者は続々と略奪をこうむった。


 戦場跡を、ひとりの男がはいまわっていた。

 胸甲騎兵の突撃をさまたげた断崖は、ぎっしり積み重ねられた馬と騎兵とでいっぱいになっていた。

 上部は死骸の堆積、下部は血潮の川。

 積み重なった死骸から、一本の手がつきでていた。

 手には黄金の指環がはまっていた。


 はいまわっていた男は、指環を抜き取った。

 立ち去ろうとすると、指を抜き取られた手が、男の上衣の裾をつかんだ。

 男は、手の主を死骸の下からひきずりだした。

 それは将校で、しかも相当の階級の者らしかった。

 男は、その将校の身体から勲章をもぎとり、ふところから時計や財布を盗み取った。


 すると将校が目を覚ました。

「ありがとう」

 将校は礼を言った。

「僕のポケットを探してみてくれ。

 財布と時計があるはずだ。

 それをあげよう」

 目の前の男によってすでに盗まれているとも知らず、将校は言った。

「君は僕の生命を救ってくれたのだ。

 何という名前だ?」

「テナルディエです」

「僕はその名前を忘れまい。

 君も僕の名前をおぼえていてくれ。

 僕はポンメルシーと言うんだ」