読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その22 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

戦争の暗雲

 雨は終夜、降りとおした。

 地面はその土砂部にこね返されていた。


 ナポレオンは、馬に引かれた砲兵隊が自由に動き回れるまで待つことにした。


 戦闘は猛烈にはじまった。

 ナポレオンはラ・エー・サントに向かってキオー旅団を投げつけながら敵の中央を攻撃し、

 ネーはパプロットよてるイギリス軍の左翼に向かってフランス軍の右翼を突進させた。


 パプロットに対するフランス軍右翼の攻撃は真剣なものだった。

 2、3の事件を外にしては、その攻撃は成功した。

 パプロットは占領され、ラ・エー・サントは奪取された。


 ラ・エー・サントの占領後、戦いは混乱をきたした。

午後4時

 4時頃には、イギリス軍は危険な状態にあった。


 オレンジ大侯は中央を指揮し、

 ヒルは右翼を、

 ピクトンは左翼を指揮していた。

 豪胆熱狂なオレンジ大侯は、オランダ・ベルギーの連合兵に叫んだ。

「ナッソー!

 ブルンスウィック!

 断じて退くな!」


 ヒルは弱ってウェリントンの方へよりかかってきた。

 ピクトンは戦死した。


 ウェリントンにとっては、戦いは2つの支持点を持っていた。

 すなわちウーゴモンとラ・エー・サントと。

 ウーゴモンは焼かれており、ラ・エー・サントは奪われていた。


 後退運動が起こされ、イギリス戦線の正面は取り払われ、ウェリントンも退いた。


「退却をはじめた!」

 とナポレオンは叫んだ。

上機嫌のナポレオン

 1815年6月18日。

 ナポレオンは、その日ほど上機嫌なことはなかった。

 午前2時半。

 ウーゴモンの森の近くに、一縦隊の行進する足音を聞いた彼は、それをウェリントンが退却したのだと思った。

「あれは撤退するイギリス軍の後衛だ。

 オステンドに到着した6000のイギリス兵をわしは捕虜にしてみせよう」

 彼はウェリントンを嘲っていた。

「小癪なイギリス人にすこし思い知らしてやろう」

 午前3時半に、退却は勘違いだったと知ると、

「ますますよい。

 わしはあいつらを退けるよりも打ちやぶってやりたいのだ」


 ナポレオンは、冗談を好んで言った。

 彼の性格の根本は、快活な気分だった。

「皇帝はいつもわれわれにイタズラばかりなされた」

 と彼の兵のひとりは言った。

皇帝案内者ラコストに問う

 ワーテルローの朝、ナポレオンは満足だった。

 それも道理だった。

 彼が立てた作戦計画は、じっさい驚嘆すべきものだった。


 いちど戦端が開かれるや、種々の変転はナポレオンの眼前に起こった。

 ウーゴモンの抵抗。

 ラ・エー・サントの頑強。

 ボーデュアンの戦死。

 戦闘力を失ったフォア。

 ……etc、etc。


 不利な事件がつぎつぎと起こった。

 しかしナポレオンは泰然自若としていた。

 彼は戦闘に慣れていた。

 局部の悲痛なできごとを、いちいち計算にいれなかった。

 個々の数字は、その総計たる勝利を与えさえするならば、彼はそれに驚きはしなかった。

 すべては自分の手中にあり、終局は自分のものであると、彼は信じていたのである。


 ウェリントンが退却しだしたとき、ナポレオンはおどりあがった。

 彼は突然、モン・サン・ジャンの高地が引き払われ、イギリス軍の正面が姿を消したのを認めた。

 彼はモン・サン・ジャンの高地を奪取することを、ミローの胸甲騎兵に命じた。