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蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その17 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

到着せる旅客ただちに出発の準備をなす

 ヴァルジャンの馬車は夜の8時近くにアラスに着いた。

 馬は疲れ果てていて、明日また帰路を走らせるというわけにはいかなかった。

 ヴァルジャンは郵便取扱所を訪れ、モントルイュ・スュール・メール行きの便に乗せてもら えるように交渉した。

 午前1時発の馬車に乗せてもらえることになった。


 ヴァルジャンは裁判所はどこか、町の老人にたずねた。

 法廷は6時には閉じると言われたが、審議が長引いたらしく、裁判所の窓はまだ明るかった 。


 広間にいた弁護士に、ヴァルジャンは審問はどうなったか訊いた。

「もう済みました。

 終身刑です」

「それでは同一人だということが検証せられたわけですね」

「同一人ですって?」

 弁護士が言ったのは、子供を殺した女の裁判のことだった。

 シャンマティユーの裁判は、まさにいま開かれているところだった。


 ヴァルジャンは法廷室に入ろうとしたが、守衛に、満員だ、と断られた。

「もう一つの席もないのですか」

「裁判長の後ろに二、三の席がありますが、そこは官吏の人にしか許されていません」


 ヴァルジャンは逡巡した。

 そして手帳を取り出すと、紙を破り、

「モントルイュ・スュール・メール市長、マドレーヌ」

 としたため、守衛に渡した。

「これを裁判長の所へ持って行ってもらいたい」

好意の入場許可

 マドレーヌ市長の名声は、広く鳴り響いていた。

 メモを見た裁判長は、入室を許可した。


 ヴァルジャンは、評議室に案内された。

 法廷の裁判長のうしろに通じている扉が、目の前にあった。

 ヴァルジャンの目は、扉の銅の取っ手にぶつかった。

 彼の視線はしだいに恐怖の色を帯びてきた。


 彼は急にふりかえって、反対側にある扉を開けて、廊下に出た。

 廊下のいくつかの角を曲がって、身を震わしながら立ちすくんだ。


 15分が過ぎた。

 ヴァルジャンは、逃げるところを引き戻されるように評議室に戻った。

 痙攣的に取っ手をつかみ、法廷への扉を開いた。

罪状決定中の場面

 法廷内にいる人々の注意は、ただ一人の男に集中されていた。

 ヴァルジャンは、年をとった自分を見るような思いで、その男を見た。

 裁判を受けている男。

 シャンマティユー。

 しかし人々は彼を「ジャン・ヴァルジャン」と呼んでいた。


 弁護人が弁論した。


 リンゴの窃盗は具体的には少しも証明されていない。

 シャンマティユーはただリンゴの枝を持っていただけで、落ちていたのを拾っただけだと言 っている。

 彼は自分をジャン・ヴァルジャンではないと言っている。

 自白しなければ救われると思ったのだろう。

 その態度は明らかに愚かだが、徒刑場での長い間の不幸が、彼を愚鈍にしたのである。

 もしジャン・ヴァルジャンと同一人だと認定されたとしても、重罪には処さないでほしい。

 
 検事が反駁した。


 被告は現行犯をおさえられた。

 しかしその犯行のすべてを否認し、ジャン・ヴァルジャンであることも否認している。

 だが幾多の証拠がある。

 さらに4人の証人が一致して、彼がジャン・ヴァルジャンであると証言している。


 検事は、無期徒刑を請求して弁論を終えた。