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蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その11 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

地平にほのめく閃光

 1821年ごろには、モントリイュ・スュール・メールにおいて、

「市長どの」

 という言葉は、1815年のディーニュにおいて、

「司教閣下」

 といわれた言葉とまったく同じ調子で用いられるようになっていた。

 マドレーヌは市長として全幅の信頼を得、尊敬されていた。


 だがその尊敬の感染を受けない者が一人だけいた。

 マドレーヌが町を通るとき、その後姿を、しかめ面をして見送る背の高い男。

 男はジャヴェルといい、警察官だった。

 優秀で、40歳のときには警視になっていた。


 ある言い伝えによれば、狼の子のうちには必ず一匹の犬の子が混ざっている。

 犬の子は、母狼に殺されてしまうか、でなければ、成長して他の狼の子を食い尽く してしまうという。

 ジャヴェルは、その狼の子の犬を人間にしたような男だった。


 主権に対する尊敬と。

 反逆に対する憎悪。

 この二つの感情で、ジャヴェルはできていた。

「職務を帯びている者は間違わない。

 役人は決して不正なことはしない」

 と彼は言い、また、

「犯罪者に救済の道はない。

 なんらの善も成しえない者だ」

 と言った。

 彼の一生は、2つの言葉につづめられた。

「監視」

 と、

「取り締まり」

 とにである。

 

 ジャヴェルは、マドレーヌの過去を探っていた。


フォーシュルヴァンじいさん

 フォーシュルヴァンという老人が、馬車の下敷きになっていた。

 ぬかるんだ地面に馬車はめりこみつつあり、いずれフォーシュルヴァンじいさんは 潰されてしまうだろうと思われた。

 そこへ、マドレーヌが通りかかった。


 誰かが馬車の下に入って持ち上げるのでなければ、老人を助けられそうになかった。

 マドレーヌは、老人を助けてくれる者はいないか、と呼びかけた。

 ルイ金貨(20フラン)を5枚あげるから、と提案したが、名乗り出る者はなかっ た。

 10枚出す、と言っても無駄だった。


「助けたいという意志が皆にないのではない」

 ジャヴェルが進み出て、言った。

「力がないのだ。

 マドレーヌさん、その車を持ち上げられる者は、私の知る限り、一人しかいません 。

 その男は囚人でした。

 ツーロンの徒刑場の」

 ジャヴェルは青年時代、監獄に雇われていたことがあった。


 マドレーヌは「え!」と驚き、青くなった。


「ああ、もう私は潰れる!」

 フォーシュルヴァンじいさんが叫んだ。


 マドレーヌは馬車の下にもぐりこんだ。

 彼の力で馬車は持ち上がり、あとは皆で力を合わせ、フォーシュルヴァンじいさん を救出した。


パリーにてフォーシュルヴァン庭番となる

 マドレーヌがフォーシュルヴァンじいさんを助けたのは、彼が市長になる以前だった。


 その後まもなく市長となり、するとジャヴェルはマドレーヌをできるだけ避けるようになった。


 マドレーヌ市長の手腕により、モントルイュ・スュールは・メールは繁栄した。


 そこへ、ファンティーヌが帰郷した。

 マドレーヌの工場が、彼女の職場になった。