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蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その8 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

うぬぼれの一章

 ファヴォリットがブラシュヴェルに言った。

「あたしあんたをほんとに愛してよ」

「もし僕がお前を愛さなくなったら、どうするんだい」

「追っかけて、しがみついて、ひっ捕らえて、水をぶっかけてやるわ」

 ブラシュヴェルは嬉しそうに笑った。


 ダーリアが声を潜めてファヴォリットに言った。

「ほんとにブラシュヴェルを大事に思ってるの?」

 ファヴォリットはささやいた。

「大嫌い。

 ケチでね。

 それより家の向こうにいる役者の男が大好き」

 

トロミエスの知恵

 トロミエスは杯に酒を満たしながら立ち上がった。

「酒に光栄あれ!」

 トロミエスは様々な事柄について、思いつくままに演説した。

 それから女たちの美しさを褒めたたえた。


 皆で工場の小唄を歌った。


 トロミエスはつづけた。

「世界は大なるダイヤモンドかな!

 僕は愉快だ!

 どこもこれお祭りだ!

 万物みな美である!

 吾輩を抱け、ファンティーヌ!」

 彼はまちがえてファヴォリットを抱いた。

 

馬の死

 トロミエスの演説は止まらなかった。


 そのとき、河岸で一頭の馬が倒れた。

 年老いた牝馬で、きわめて重い荷車を引いていた。

 疲れて進もうとしなくなった馬を、馬車屋が、

「畜生!」

 と鞭で打とうとしたとき、馬は倒れ、再び起きなかったのである。


「かわいそうな馬」

 とファンティーヌはため息をついた。

「ファンティーヌが馬のことを悲しみ出したわ!」

 ダーリアがばかにした。


 ファヴォリットがトロミエスに言った。

「さあ、びっくりするようなことは?」

「そうだ。

 ちょうどその時がきた。

 婦人諸君、しばらくわれわれを待っていてくれたまえ」

 男たちは自分の恋人の額にキスすると、外に出て行った。

 

歓楽のおもしろき終局

 ファンティーヌたちは、男たちがボンバルダ料理店から出てゆくのを見た。

 彼らは笑いながら女たちに合図をし、雑踏に姿を消した。

「長くかかってはいやよ!」

 ファンティーヌは叫んだ。


 男たちは帰ってこなかった。

 ボーイが部屋に来て、あずかっていた手紙を渡した。

「びっくりすることとはこれである」

 とあて名のところに書いてあった。

 
 手紙には次のようなことが書かれていた。

「われわれに両親のあることは御承知であろう。

 両親は放蕩息子の帰国を願っている。

 われわれはそれに従うことにした。

 われわれは出発する、いやもう出発したのである。

 急いでわれわれのことを泣き、早くわれわれの代わりの男を求められよ。

 もしこの手紙が貴女たちの胸をはり裂けさせるならば、またこの手紙をも裂かれよ。

 さらば」


 一時間後。

 自分の室に帰ったファンティーヌは泣いた。

 彼女は妊娠していた。