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蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その5 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

絶望のどん底

 19年もの間、服役していたジャン・ヴァルジャン

 彼は、自分の身に起きたことについて考えてみた。

 

 彼は自分を潔白とは思わなかった。

 パンを盗まなくとも、ほかに手段はあったはずだ。

 自分は誤ったのだ。

 

 だが誤っていたのは自分だけだろうか。

 勤勉に働いてきた自分にパンがなかったのはなぜか。

 犯した罪に対してこの刑罰は重すぎないか。

 社会や法律に責任はないのか。

 

 自分に下されたこの刑罰は、不公平であると、ヴァルジャンは結論した。

 

 ヴァルジャンに社会がしてくれたことは、悪のみだった。

 人々との接触はいつも打撃だった。

 彼は親しい言葉や親切な目に出会ったことがなかった。

 

 彼は一つの信念にたどりついた。

 人生は戦いである、と。

 そして、自分は敗北者である、と。

 

 ヴァルジャンの武器は憎悪しかなかった。

 徒刑場には囚人のための学校があり、ヴァルジャンは40歳でその学校に行った。

 読むこと、書くこと、計算することを学んだ。

 知力を強固にすることは憎悪を強固にすることのように感じた。

 

 彼は、自分を不幸にした社会を有罪とし、その社会を作った天をも有罪と断じた。

 

 ヴァルジャンは強大な体力にめぐまれていた。

 彼には4人前の力があり、「起重機のジャン」と呼ばれていた。

 身軽さにおいてはもっとすぐれており、垂直の壁を4階まで登ることができた。

 

 彼の魂は乾燥した。

 心のかわく時には、目もかわく。

 服役した19年間、彼は一滴の涙も流さなかった。

 

海洋と闇夜

  海中に一人の男!

 それが何ぞや! 船は通り過ぎてゆく。

 彼は深海のうちに絶望の叫びをあげる。

 彼は船員だった。

 足をすべらし、落下した。

 それで万事終わったのである。

 海、それは刑罰を受けたる者を投ずる社会的の酷薄なる夜である。

 海、それは際涯なき悲惨である。

 人の魂は、この深淵のうちに流れ込むとき屍となる。

 だれかそれを甦らするであろうか。

 

新たな被害

 ジャン・ヴァルジャンは自由の身になった。

 徒刑場で働いた分の積立金として109フラン15スーを渡された。

 ヴァルジャンの計算では171フランのはずだった。

 盗まれたのだと彼は思った。

 

 釈放の翌日、彼は荷卸しを手伝った。

 30スーの賃金が支払われる約束だった。

 しかし雇い主は25スーしか渡さず、言った。

「貴様にはそれでたくさんだ。

 監獄に気をつけろ!」

 

目をさました男

 午前2時。

 ミリエル司教邸に泊まったジャン・ヴァルジャンは目をさました。

 

 彼の脳裏には、銀食器のことが浮かんで離れなかった。

 夕食をごちそうになったとき、食卓に置かれたものだった。

 売れば200フランにはなりそうだった。

 

 彼は一時間もの間、迷った。

 大時計が3時を告げたとき、身をおこした。

 もう一度、大時計が鳴ったとき、行動を開始した。

 

 槍のように先が尖った、鉄の棒。

 それは坑夫用の燭台だった。

 徒刑場で岩を切り出す作業をする際、使っていたものだった。

 ヴァルジャンはその燭台を手に、ミリエル氏の室へ向かった。