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蝸牛角上

読書メモ。あらすじ。というよりダイジェスト?

レ・ミゼラブル その2 (ビクトル・ユーゴー作 豊島与志雄訳)

上院議員

 その上院議員は、人もうらやむ成功者だった。

 上院議員は言った。

 

「天国なるものはたわごとにすぎない。

 神というのは、ばかばかしい怪物にすぎない。

 

 私は虚無である。

 

 生まれる前に私は存在したか。

 否。

 

 死後に私は存在するだろうか。

 否。

 

 この地上において私は何物であるか。

 わずかの塵である。

 

 この地上において何をなすべきか。

 苦しむべきか楽しむべきか。

 

 苦しみは私をどこへ導くだろうか。

 虚無である。

 しかし、すでに苦しんだ後にである。

 

 楽しみは私をどこへ導くだろうか。

 虚無である。

 しかし、すでに楽しんだ後にである。

 

 食うか食わぬかの問題だ。

 私は食う。

 

 下層のみじめな奴らには、何かがなくてはならない。

 伝説や妄想や霊魂や不死や天国や星などが。

 何物も持たない者は善良なる神を持つ」

 

元民約議員G

 ディーニュの近くの田舎に、孤独な老人Gが暮らしていた。

 元民約議員で、革命や王の死刑に関わっており、そのことから人々から怖れられ、また嫌われていた。

 ミリエル氏ですら、彼を快くは思っておらず、

「あそこに一人ぽっちの魂がある」

 と認識しながら、その家を訪ねることをためらっていた。

 

 だがGに死期が迫っていると聞いて、ミリエル氏はついにその住まいを訪ねた。

 

 Gには医学の心得があり、自分の状態を把握していた。

「3時間もしたら死ぬでしょう」

 

 Gは革命について語った。

「人間は一つの暴君を持っています。

 すなわち無知という暴君を。

 私は暴君の終滅に賛成しました。

 われわれは古き世界を倒したのです。

 

 不完全ではあったでしょう。

 しかし荘厳なものでした。

 フランス大革命は人類をきよめたのです」

 

 ミリエル氏は言った。

「ルイ17世のことは?」

 

「あなたは何のために涙を流すのです?

 

 罪なき子供のためにですか。

 それならば私はともに涙を流しましょう。

 

 それとも王の子のためにですか。

 それならば考えていただきたい。

 

 凶賊カルトゥーシュの弟は、弟であったという罪のために処刑されました。

 ルイ十五世の孫であったルイ十七世と同じく、それはいたましいものだったのです。

 

 すべての罪なき者のために涙を流すというのでしたら、私も同意です。

 私も王の子のために泣きましょう。

 あなたが人民の子のために泣いてくださるならば」

 

 Gは、ミリエル氏が他の司教と同じように贅沢な暮らしをしているものと思い込んでいた。

 

 Gは言った。

「私が祭壇の幕を引き裂いたのは事実である。

 しかしそれは祖国の傷をふさぐ包帯にするためだった。

 

 私は人類が前進するのを助けた。

 自分の義務を尽くし、なし得る善をなした。

 

 私は追われ、嘲笑され、人権を剥奪された。

 多くの人々が、私を軽蔑している。

 私が天罰を受けた者のように見えるのだろう。

 

 そして私は誰も恨まずに、孤独に死のうとしている。

 司教。

 あなたは私に何を求めに来られたのか?」

 

「あなたに祝祷を」

 

 Gは息を引き取った。